ミツマサ34世
坂口恭平はいつまでも面白い人だ。
自身が躁鬱病で苦しんできたこともあって、生きることが辛くなったという人を電話で支え、当面の生活費を自腹で振り込み、生活保護申請のサポートなどもして、多くの人を救っている。
その中でミツマサくんのサンプルが具体的であった。
会社で働けず、家族からも見放されたミツマサくんはまずは生活保護を申請して月13万円もらう。
そしてミツマサくんは耕作放棄地を0円で借りて、住む家は3万円で建てて、家賃0円の暮らしをしている。
坂口恭平は建築家出身で、フィールドワークでホームレスの生活の知恵を学んでいるので、家を建てることは簡単なのである。
ミツマサくんは30平米の畑を持ち、自分で食べる分の野菜はここで賄えるので、食費も0円。
近隣の高齢者とのコミュニケーションも良好で、食べ物をいただいたり、大工仕事を頼まれたりといった交流があるので防犯や災害時の助け合いにも安心だ。
食べ物がない時はしばらく食べないこともある。
うんちは一ヶ月、おしっこは一週間溜めて発酵させて肥料にする。何も無駄にならない。
こうした暮らしをも8年続けているので、13万円×12ヶ月×8年で1248万円もの積み立てがある。
この辺が微妙なところだが、貯金をすると生活保護がもらえなくなるとかで、ミツマサくんは坂口恭平の会社の社員ということになっていて、会社の中にミツマサくんのお金がある。
月いくらで暮らせるかの実験
年に一回、一ヶ月だけ実験と称して、都会での生活もする。
新高円寺で家賃18000円の部屋を借り、食費は1万円くらい、光熱費も含め月3万円あれば暮らせることがわかった。
つまり、畑が無くなったとしても1248万円を取り崩して今後34年暮らせる。
仕事が辛い、生きていたくないと言っていた人が、働かなくても34年生きていけるのだ。
ゆえにミツマサくんは坂口の会社ではミツマサ34世と称される。
社長さんの真似はしないこと
このサンプルで重要なポイントは、お金があっても生活レベルを上げないことである。
世の中の社長さんたちは車や家を経費にできるので、そうしたことに金を使っても痛くも痒くもないカラクリがあるのだが、それを勤め人が外見だけ見て真似をしてはならないのだ。